リース取引の税務会計処理が変わります。

「所有権移転外ファイナンスリース取引(借手側)に関する取り扱い」の大きな動きを整理します。
☆所有権移転外ファイナンスリースの定義は最後をご覧ください。

(1)会計(リース取引に関する会計基準と適用指針)

平成19年3月改正前

売買取引に係る方法に準じた会計処理(売買処理)を原則としながらも、一定の注記を要件として通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(賃貸借処理)を認めてきた。従って、殆どの企業が賃貸借処理を採用しているのが現実。<支払の都度、費用処理>

平成19年3月改正後

→平成20年4月1日以後開始事業年度から適用
通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うものとしており、(会計基準9項)売買処理を義務づけた。ただし、リース資産総額に重要性が乏しい場合には賃貸借処理を行うことができる。
なお、重要性が乏しいと認められる場合とは、具体的には次の1.ら3.のいずれかを満たす場合である。

  1. 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、リース料総額が当該基準額以下のリース取引
  2. リース期間が1年以内のリース取引
  3. 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引で、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリース取引

ただし、中小法人のリース取引については、そもそもリース会計基準に準拠することが法令上強制されるわけではないため、従来どおり賃貸借処理を採用することも想定される。

(2)税務(平成19年度税制改正後の新しいリース税制)

平成19年度改正前

賃貸借処理

平成19年度改正後

平成20年4/1以後締結リース取引から適用
新リース会計基準に整合性を図るために、抜本的な見直しがされた。
→売買処理に統一
(ただし、賃借料として損金経理した金額は償却費として損金経理したものとする。)
償却方法は、リース期間定額法。
リース期間定額法とは、リース資産の取得価額をリース期間の月数で除して計算した金額に当該事業年度におけるリース期間の月数を乗じて計算した金額を各事業年度の償却限度額として償却する方法である。

<計算式>

(リース資産の取得価額―残価保証額)×その事業年度におけるリース資産のリース期間の月数/リース資産のリース期間の月数

リース資産の取得価額は、残価保証額がない場合は、リース料総額となる。ただし、法人がその一部を利息相当額として区分した場合には、その区分した利息相当額を控除した金額となる。

消費税の取扱「重要」

消費税についても、法人税と同様に、所有権移転外ファイナンスリース取引は売買取引に係る方法に準じた処理となるので、借り手側がリース会社に支払うリース料総額が課税仕入れとして認められ、仕入控除についてリース取引開始時に一括して行うことができる。

(従来は賃貸借処理であったので、リース料の支払期日の都度、支払額だけを仕入控除していた。)

その場合、契約において利息相当額が明示されていれば、その利息相当額は非課税仕入れになり、その他の部分が課税仕入れとなり、明示されていなければ、利息相当額も含めたリース料総額が課税仕入として取り扱われることになると考えられる。(消基通5-1-9)

租税特別措置法上の取扱「重要」

例えば、中小企業基盤強化税制のように、リース料総額の60%について税額控除が認められているものについては、通常の売買取引と同様に100%の税額控除が認められる。つまり、リース税額控除が廃止されることを意味する。

ただし、特別償却制度や圧縮記帳制度については、その内容から認められないものとされる。(所有権が移転しないため)

(3)リース取引の定義

  1. オペレーティングリース
    ファイナンスリースでないもの
  2. ファイナンスリース
    次のaおよびbのいずれも満たすもの
    a:事実上解約不能である(注1)
    b:フルペイアウト(注2)

さらに、ファイナンスリースは所有権が借手に移転すると認められる取引(所有権移転ファイナンスリース取引)とそれ以外の取引(所有権移転外ファイナンスリース取引)に分けられる。(注3)

(注1)事実上解約不能とは、例えば、法形式上は解約可能であっても、解約時に相当の違約金を支払わなければならないなどのケースも含むという意味。

(注2)フルペイアウトとは、借手が物件を所有することにより得られるのと同様に、ほとんどすべてのコストを負担することをいう。

(注3)所有権移転とは、リース取引の条項に「所有権移転条項が付いているもの」「行使が確実に予想される割安購入選択権付となっているもの」「特別仕様のもの」が挙げられる。