黒字化のための7つのステップ

黒字化のための7つのステップ

以下のステップを1つひとつおさえていきましょう。

ステップ1 現状シュミレーション
ステップ2 利益率改善シュミレーション
ステップ3 固定費削減シュミレーション
ステップ4 売上高アップ
ステップ5 資金対策
ステップ6 具体的施策・行動計画
ステップ7 行動あるのみ

ステップ1 現状シュミレーション

ステップ1 現実シュミレーション

赤字は、売上金額を超える支出が存在している状態ですから、その対策としては支出を賄えるだけの売上を確保するか、支出を抑えるかのどちらかしかありません。
従って、対策のためにはまず当社の収支構造(分岐点)を把握することが必要です。

<手順>

1.月次決算の数字を部門別(商品別)に並べて限界利益率(粗利益率)を見る

※限界利益とは「売上ー変動費(原価)」で粗利益と同義であると考えて結構です。
ちなみに変動費とは売上に比例して増減する項目、対して固定費とは売上に関係なく発生する項目です。
変動費の代表的なものは材料費、外注費等のいわゆる原価で、固定費の代表的なものとしては家賃や人件費があげられます。

2.月次決算推移表から固定費(固定支出)の内容を科目別にみる。

※ポイント・・・ほぼ毎月発生するものと、一年間のなかで臨時的に発生するものと分けて把握すること
その臨時費用は12で割って一ヶ月平均額として平準化する(月次費用化)
また、借入元金返済額等のBS項目も支出金額の大きな要素なので忘れずに。
ちなみに、資金繰り安定化のために、この臨時費用の月額平均額と納税貯蓄と未来費用貯蓄を毎月積んでいくことをおすすめします。

3.収支分岐点売上を計算する

※収支分岐点売上=(固定費用+必要利益)/限界利益率(粗利益率)

必要利益として最低限考慮しなければならないものが、借入元金返済額などのBS支出項目とそれにかかる税金です。
ここに、未来費用(内部留保額)を入れるなど・・・それぞれ経営者の方の考えをプラスしてもよいでしょう。

●収支分岐点売上つまり必ず達成しなければならない売上金額を算出してみて、その大きさに驚かれるかもしれません。
こんなにも高い目標になってしまうのか・・・と。
この売上をあげるためにどうすればいいのか?あるいは当社の収支構造について考えはじめることになります。

その必ず達成しなければならない収支分岐点売上と現実の売上実績との乖離を目の当たりにして、ご自分の事業の収支構造を身にしみて感じること、これがステップ1の目的です。

ステップ2 利益率改善シュミレーション

ステップ2 限界利益改善シュミレーションII

ステップ1で現状把握ができましたので、部門ごとあるいは商品ごとの限界利益率(粗利益率)の改善を考えてみてそれをシュミレーションに反映させてみましょう。
(実行できれば分岐点売上(目標)をさげることができます。)

<方法>

方法1.プロダクトミックスを変える

プロダクトミックスとは商品構成を見直すということです。
下図は利益率の高いオーガニック商品の売上構成比率を20%に高め、国内商品を減らしたことで、全体の限界利益率が1.3ポイント向上していることを示しています。

<変更前>

  売上構成比   限界利益率 加重平均 
 国内商品   40.0   37.5   15.0
 輸入品   50.0   40.0   20.0
 オーガニック   10.0   50.0    5.0
 合計  100.0     40.0

<変更後>

  売上構成比   限界利益率 加重平均 
 国内商品   30.0   37.5   11.3
 輸入品   50.0   40.0   20.0
 オーガニック   20.0   50.0   10.0
 合計  100.0     41.3

商品別、部門別の粗利益を把握したうえで、まずは「この商品(部門)を重点的に売っていこう」と決めることが大事です。
細かい部分はそのあとでいろいろ前向きに考えていきましょう。

方法2.商品ごとの粗利益率を高める

これは外部環境との兼ね合い(相場)がありますので、売価を見直す(いわゆる値上げ)ことは容易ではありません。
しかし、値引きを減らすことは可能です。
例えば、平均値引率が10%位であるなら1ポイント減らそう運動を掲げてみるのも一考です。
また、仕入先交渉によって変動費を引き下げられれば利益率改善が果たされます。
品質や機能を見直すほか、材質や加工方法の変更など、製造現場の人にも入ってもらい、あらゆる角度から検討することによって単価の安いものに切り替える工夫をしましょう。
例えば、見えない部分の表面処理加工は物理的な機能さえ満足できればよいという機能重視に徹してみるという柔軟な発想をとりこみましょう。

方法3.マイナス要因を除去する

マイナス要因とは、不良・手直し・返品・事故・手持ちなど、利益の足を引っ張る要因いわゆるミス・ロスで、これらは慢性的な赤字部門につきものと言っていいでしょう。
マイナス要因の除去は先の購入単価の引き下げと違って社内努力でできることなので、ミス・ロスゼロの目標を掲げて全社一丸となって取り組みましょう。
(不良や返品などマイナス要因の除去で大切なのは、継続的なデータ取りです。)

ステップ3 固定費削減シュミレーション

ステップ3固定費削減シュミレーション

私(服部税理士)のページのもう1つの大見出し(大タイトル)テーマが「コスト削減」なので、そちらの具体案
も是非読んでいただけたらと思います。

「コスト削減」

ここでは、コストを機能別に整理する手法を考えたいと思います。

~コストを機能別にとらえる~

経営活動を経営機能の点からみると、製造・販売・物流・管理活動などに分かれます。
そして、コストはこれら活動ごとに把握されますが、さらに細分化して、例えば、販売コストは販売活動費、営業業務費、集金費、販売促進費などに分けることができます。
機能別分析とは、これら経営機能ごとにコストを把握してその経済性(費用対効果)を分析することです。
営業費用であれば、営業活動に関する勘定科目の内訳を見て、「販売活動」「営業業務」などに直接要した金額を拾い出します。

<営業費内訳>

   販売活動 営業業務 販売促進 広告宣伝 配送業務    合計 
 給与賞与  1,200     250      150      150       300    2,050
 旅費交通費     180             450       630
 賃借料       50      50     -     -       100       200
 通信費     100     120     30       40         80       370
 減価償却費       40       40       -       120       200
 支払保険料    -   -    -    -         50         50
 ・・・・・・            
 ・・・・・・            
  合計   2,400     550     220     290    1,800    5,260

コストを機能別にとらえたら次は改善策の検討です。
改善の着眼点は仕事の仕方や仕組みを変えることです。具体的には以下の通り。

  1. システム改善による人員の削減ができないか。
  2. その仕事を止めてしまうことはできないか。
  3. 他の仕事と併合することはできないか。

経営機能の見直しで忘れられないのが本社などの管理部門です。小さな本社と言われるように管理費用は必要最小限に考えてみましょう。

ステップ4 売上高アップ

ステップ4 売上高アップ

●既存事業での売上拡大

既存事業で売上を伸ばす方法論としては次の二つの方向性しかありません。

  1. 販売先を増やす(客数の増加)
  2. 現在の販売先にもっと買ってもらう(客単価の増加)

どちらでいくのか、あるいは両方でいくのかは経営者の皆様のご判断です。
ちなみに誤解して欲しくないのは、客単価の増加のために考える方法(行動計画)として「売価を上げる」と言う作戦は考えないでください。
考えるなら、ステップ2の「利益率改善シュミレーション」の段階において、市場性や競合相手の動向などの外部環境を考慮しながら判断してください。(既にしているはずでもあります。)
ここでは、あくまでも「数の増加」を考えるのです。外部環境との兼ね合いで「値上げ」は難しいのに「とりあえず、上げられるところはあげる努力をしてみよう」という作戦(部下への指示)をしてしまったら、むしろ「販売数をおとす」ことになってしまいます。
(戦略を練るときは、このように思考を順序だてて(とっちらからないように)整理する意味でステップごとに考えることが有効だと考えます。)
ただ、販売数を増やしたいがための「安易な値引き」(値下げ)に陥らないようにすることは必ず意識してください。

数を増やすためには、とにかくそのことをもっと意識して「何でもやってみる」ことだと思います。
私は税理士として様々な社長の経営状況を見て、そのお話を聞いていますが、売上をあげている(あるいはしっかり維持している)方は積極性が違うなぁと思います。実にアグレッシブです。
一方、多くの社長が「この厳しい現在の状況ではなにやっても無理じゃないかな」とか「周りも皆同じだから仕方がないよ」とか「政治や役人があんな状態なんだから中小企業の立場ではどうにもならないよ」
とおっしゃいます。実際の現実が確かに厳しいのだから(以前とは違うから)、気持ちはよく解ります。
でも、経営計画策定時や月次巡回監査時などことあるごとに、「確かにそうですね。でも皆が沈んでいる今こそ、ちょっとしたことでもいいからいろいろやってみましょうよ」と声をかけさせてもらってます。

そう、小さな取り組みをなんでもやってみること。そして、そういう前向きな姿勢(意識)を持ち続けること、です。
(もちろん「明らかにやっても無駄な行動」は時間とお金の浪費につながるので慎むべきですが)

例えば・・・

・普段やっている(意識している)ことを更に強化する。<客単価の増加>

→品質をあげるために徹底的に○○をする。そしてそのことをPRする。
→販売先への訪問数を増やす。そのためのスケジューリングの見直し。
→販売先への滞在時間を増やす。そのための「話題」づくり
→販売先への一声運動「○○もいかがでしょうか?」
→当社商品の「組合せ購入事例」を紹介していく

・販売先の開拓のために <客数の増加>

→紹介してもらう仕組み(紹介奨励制度)を考える
→紹介をもらうために利用できる人は誰か、いつもアンテナを貼って行動する(金融機関・保険外交員などの出入り業者・ゴミ処分業者・仕入業者など)
→販売チャネルの開拓(今までやったことないが、思い切って電話営業を試みる、とか)
→異業種交流会への参加
→無料相談会を開いてみる
→ホームページのたちあげ(やりようによって直接的な集客効果は少なからずあると思いますが、間接効果も生まれるので私はホームページの開設はお客様におすすめしております。)

いろいろとやってみて、かつ、ある程度やりつづけてみましょう。(今日明日に成果がでるわけではありませんから)
失敗してもまた、長らくやってみて(効果がなくても)それはそのことがわかったわけだから成果あり、と考えることができます。
それと取り組んでいることを自分の中だけでコツコツとやるのではなくて、ドンドンお客様(及び仕入業者や友人等あらゆる人)に話しましょう。
さらに言えば、これから取り組むこともあらゆる人に対して言ってしまうのです。これは、PR(広告)効果を狙える、ということもあるかもしれませんが、それより人間の行動特性につながる話です。
人は「口で表現したこと」が多ければ多いほど、そのことが脳に刷り込まれて「言ったこと」の実現可能性が高まるそうです。
是非、「やってみよう」と考えたことは紙に書いて社内に貼ったり、いろいろな人に伝えてください。

何をやっても無駄と考えてしまう方は事業を起こした時のような情熱が薄れています。また思い起こしましょう。
「とにかくやってみよう、そしてそれを口にしてしまおう」
精神論的な話ですが、このことが黒字化のための最大のスローガンであることに間違いありません。

●新規事業への取り組み(大きな取り組み)

既存事業と相乗効果の生まれる新規事業のほか、商品や市場を、福祉、地球、環境、IT、安全など成長分野にシフトすることを例えば考えましょう。
こうした観点から新商品開発や新事業が芽生える可能性もあります。

1.「商品」「市場」のマトリックスで進むべき分野を検討する

売上アップを目指す新たな着眼は、商品と市場の両面から、それぞれ「既存」「新規」に分けて、経営戦略の方向を固めることです。
現在の商品を今の市場で販売する左上欄は、現在の市場を掘り下げる深耕戦略。
現在の市場に新たな商品を投入するのは右上の新商品開発戦略。
今の商品を新規市場に向けて販売するのは左下の市場開拓戦略。
そして、新規市場に新商品をもって進出するのが右下の多角化戦略、です。

     (商品)既存      (商品)新規   
 (市場)既存   深耕戦略   新商品開発戦略
 (市場)新規   市場開拓戦略     多角化戦略

A社は、現在の国内商品、輸入商品、オーガニックの3本柱を、問屋、直販で販売してますが、この市場を深耕するとともに、新たな市場として「業務用市場」の開拓を、また「新規商品」として健康食品の開発を検討することとしました。
さらに長期的には、新たな分野として健康補助食品分野への進出を視野に入れています。

     (商品)既存      (商品)新規   
 (市場)既存

  <深耕戦略>

オーガニック部門の強化

による利益改善

  <新商品開発戦略>

健康食品市場の調査

オーガニック商品の絞込み

 (市場)新規

 <市場開拓戦略>

業務用市場進出の調査

適合商品の選別

   <多角化戦略>

健康補助食品ビジネス

への参入

2.利益貢献商品の見分け方と対策

いい商品は、1.利益率が高い、2.成長率が高い、という条件があります。
しかし、利益への貢献と言う意味では商品ごとの売上高を無視するわけにはいきません。
そこで、「利益率」「成長率」と「売上高」のマトリックスで貢献商品を選び、販売戦略に取り込みます。
マトリックスに位置づけられた商品を分析し、商品ごとの対策を検討します。

  限界利益率   限界利益率  限界利益率  限界利益率  限界利益率
 ↓月商ランク↓  1:23%未満  2:23%~  3:25%~  4:27%~  
 A:900千円~          
 A:700千円~    甲商品      
 A:500千円~    乙商品    丁商品  
 A:500千円未満      丙商品    

 

  成長率   成長率  成長率  成長率  成長率
 ↓月商ランク↓  1:94%未満  2:94%~  3:97%~  4:100%~  
 A:900千円~          
 A:700千円~  甲商品        
 A:500千円~    乙商品  丁商品    
 A:500千円未満        丙商品  

3.成長分野へのシフト

成長分野にシフトすることは企業が大きく伸びる条件です。
そこで、これから伸びる分野であるCEEビジネスへのシフトを図ります。
Cはケアビジネス(介護、福祉など)、EはIT(インターネット)ビジネス、そして最後のEはエコ(環境)ビジネスです。
しかし、CEEビジネスが成長しているからといって、必ずしもCEEに業種転換するということではなく、現在の事業をCEEに関連付けていくことがポイントです。
例えば、工務店ではバリアフリーの住宅や、IT対応住宅、エコ住宅、インターネットによる住宅相談などでCEEの可能性は広がります。
八百屋さんでも安全な有機野菜の取り扱いやインターネット販売は時代の流れと言ってもよいでしょう。

◎新規事業について、カリスマ経営者である㈱武蔵野の社長:小山昇さんの著書「社長!儲けたいなら数字はココを見なくちゃ」の中からそのお考えをご紹介いたします。
日本経営品質賞を受賞する会社を率いて、日々様々なご実践をされている小山社長ならではの「お言葉」を私達が目指すべきスピリッツに刻み込んでいただきたいと思います。

~「5年で売上2倍」を目指せば、新規事業のアンテナが立つ~

○新しいことに挑戦しないと、まず達成不可能
武蔵野の実践経営塾では、社長に5ヵ年で売上を倍にする長期経営計画を立ててもらいます。
なぜ5年で売上倍増なのか。それはいまと同じやり方では、会社は成長しないことを、みなさんに気付いてほしいからです。
5ヵ年で売上2倍の目標を設定すると、毎年15%ずつの売上増が必要になります。3年で倍増なら26%増です。
事業を始めたばかりの若い会社ならともかく、成熟した会社が現状の事業を現状の延長線上で行なうのでは、まず達成不可能なレベルです。
では、いったいどうすればいいのか。現状で不可能ならば、これまでのやり方に縛られず、新しいことに挑戦するしかない。
あえて無謀な目標設定を皆さんに課すのも、固くなっている頭を柔らかくして、現状維持の発想から抜け出してもらいたいからです。
武蔵野は毎年、長期事業構想書の5ヵ年計画を更新しています。第43期に翌年からの5ヵ年計画をたてたときは、現業の拡大だけでは売上目標に届かないことが明白になりました。
そこでムリヤリに第45期に「管理職派遣事業」を新規事業として書いたところ、経営サポート会員の企業から問い合わせがぽつぽつと入り始めた。
苦肉の策として書いた事業でしたが、真剣に取り組む価値があるとお客様が教えてくれました。
もっとも、長期事業構想書を見ればわかるのですが、管理職派遣事業が5年後に売上3億7千万円まで成長しても、売上倍増の目標にはまだ達しません。ならばどうするのか。
未達分を埋めるため、また新たに事業をつくるしかない。
長期事業構想書の新規事業の欄を見ると、足りない分をつじつま合わせで、5年目、第48期に7600万円の新規事業をつくりました。(記入しました。)
どんな新規事業なのか、現段階ではまだ何も具体化していません。
というと「そんないいかげんな計画でいいのか」「新規事業の中味を固めてから計画に盛り込むべきではないのか」と心配する方がいますが、これがいつもの私のやり方。
大切なのは、「新規事業をやる」と決めることであり、中味はあとからどうにでもなります。
新規事業をやると決めると、まず自分の中でアンテナが立ち、普段から「これはビジネスになる」「あの会社の事業は、うちにもできないか」と問題意識を持って周囲を観察するようになります。
このアンテナさえ立てれば、あとは不思議と新規事業に巡り会います。

山陰地区ビルメンテナンス業最大手の「株式会社さんびる」の田中社長に、長期事業構想書の作成を指導したところ、作成した計画は毎年2%成長の無難なものでした。
そこで5年後の売上を2倍にする条件で、もう一度作成し直してもらいました。5年で倍増の真意は、どの時点で新店、新事業に着手しなくては間に合わないかを考えてもらうためです。
無謀な目標を設定すると、頭は急に回転を始めます。不足分を何とかしなければといろいろ考えた結果、田中社長は「山陽地区へ進出する」と長期構想に書いた。
すると不思議なもので、翌年には岡山県と山口県から出店の話が持ちかけられて、「株式会社さんびる」は本当に倉敷市と山口市に営業所を出店した。
出店のチャンスが舞い込んできたのは、決して偶然ではありません。出店のチャンスは何度もあったが、社長は「わが社のテリトリーは山陰地区」と決めていた。今回、チャンスを見逃さずにキャッチできたのは、「山陽地区への出店」のアンテナが立ったからです。

○成り行き任せのスタートでも必ず財産になる
新規事業は大きな投資であり、経営に関する危機を伴います。それでもやらねばならないのは、関心と行動の焦点を未来に合わせ、市場とお客様の要求の変化に対応して絶えず脱皮を行い、高収益事業を作り出すためです。
それなら、なおさら成り行きに任せたりせず、ビジネスアイディアを大事に育てて、慎重に市場調査を行ない、検討を重ねてから始めるべきだという意見もあるでしょう。
しかし、どんなに準備を重ねた事業もその成功はフタを開けてみるまでわかりません。マーケティングにたくさんのお金をかけられる大企業でさえ新規事業でコケることがある。中小企業なら言わずもがなでときには失敗することも織り込んで、とにかく始めるしかない。失敗を恐れて足踏みしていたら、いつまでたっても新規事業はできません。
ダスキン事業1本のわが社が初めて新規事業として行なったのは、オフィスコーヒーサービスでした。きっかけは、ダスキン代理店がフランチャイザーとして始めたからで、まさに成り行きでした。この事業は30年続けたが、2年前に撤退しました。
しかし、後悔はしていません。オフィスコーヒーサービス事業は結果的に失敗に終わりましたが、財産は残りました。部長職以上の半分は、この事業部の出身です。日本経営品質賞受賞時の役員は、全員アルバイト入社で、オフィスコーヒーサービスで育ちました。
同じように成り行きで始めた経営サポート事業やケア事業は、いまやわが社の柱になるまで成長しました。初めからうまくいく新規事業なんてわかりっこない。ヘタな鉄砲も数打ちゃ当るという基本姿勢で始めたから、経営サポート事業やケア事業にも乗り出せた。
現業になんとなく限界を感じているが、新規事業に対してはどうも及び腰になる社長は、ぜひ5年で売上倍増という長期事業計画を作成してください。おそらく現業のみでは頭打ちになること、そして現状を打破するためには新しい挑戦が必要である現実を否が応でも突きつけられるでしょう。
そこから次の一歩を踏み出せるかどうかは、社長の決断次第です。

ステップ5 資金対策

黒字に転換するまでは赤字が続くので、この間、資金が不足します。

その不足する資金を明らかにし、黒字転換計画と資金繰り表を作成して、内部での調達・外部からの調達の両面から対策を練りましょう。

1.黒字化までの不足資金

仮に黒字化までに半年を要するとすれば、この半年間の赤字分(減価償却前)の資金が不足します。不足資金は以下の式で計算されます。

 不足資金=黒字転換までの赤字累計額ー減価償却費+運転資金の増加額 

この不足資金の調達ができないと、せっかくの黒字に転換する見通しが立っても資金が回っていきません。この資金調達は次の3つの順序で考えます。

  1. まず内部からの資金を生み出すこと。
    これは所有有価証券の売却や土地の譲渡などで資金を生み出すことです。
  2. 第二には運転資金の減少を図ること。
  3. 金融機関からの借入をすること。

2.内部調達の検討・・・(1)及び(2)

(1)資産売却は税金負担も考慮して、その分を予定してください。(納税貯蓄)

従って、使える金額は税引後の資金となります。

(2)運転資金対策

運転資金とは営業活動に伴って必要となる資金です。

通常、売上高が増加すると売掛金や商品在庫が増加します。仕入増加に伴う買掛金も増加しますが、売掛金・商品在庫の増加が大きいので、その差額分の資金(これを増加運転資金といいます)が不足します。売上高を増加させるために資金が必要になるということです。

そこで、借り入れなくても済むように、あるいは借入額を減らすために運転資金対策を立てます。これは、仮に売上高が増加しても運転資金が増加しない対策です。

具体的には、

I)前金をもらう

II)支払いサイトの短い得意先へ売上をシフトする

III)回収サイトの長い得意先の回収条件を変更してもらう

IV)売れ筋商品に商品構成を変えて在庫を減らす

V)頻繁に仕入を行なうことにより在庫を減らす

などです。

このような方法で、売上高が増加しても売掛金や在庫が減少するか、あるいは売上高の伸び以下に抑えられれば運転資金は減少します。その分だけ資金が生まれます。

3.外部調達(金融機関対策)

内部で調達ができない場合には金融機関に融資を申し込むことになります。黒字化の利益計画書と資金繰り計画書を作成して提出するわけですが、その目標数字の実現可能性を認めてもらうために、できるだけ具体的な行動計画をしっかり盛り込むことです。

また、革新性の高いアイディアが考えられるなら経営革新計画を作成して、新事業活動促進法の承認を受けていれば融資はいっそう受けやすくなります。

ステップ6 具体的施策・行動計画

会計数値の上から改善のシナリオ(方向性)が固まったら、あとは具体的な実行計画です。
今までのステップ(数字のシュミレーション中心)から差し迫った思い・切迫感がいろいろな行動アイディアを浮かび上がらせてくれていることと思います。
これらのアイディアを「誰が、いつまでに、どのように取り組むか」といった行動計画レベルに仕上げるのです。

●集客プロセスとセールス(販売)プロセス
浮かんだ行動アイディアを「集客プロセスに属するもの」と「セールス(販売)プロセスに属するもの」に分けて整理してみてください。

ステップ4の売上アップのところで申し上げましたが、「やれるところから、とにかくやってみよう」的に、思いついたことをなんでもやってみる、というのもいいかもしれませんが、最終的には大切な経営資源である時間とお金の浪費だけだった、ということにもなりかねません。
(ただ、そうなることを恐れて行動しないのでは今までとなんら変わりませんからね)

例えば、思い立った行動アイディアが「ホームページをつくってみよう」とか「チラシを定期的にまこう」といった集客プロセスに属するものばかりだったとします。
本人は、前年までとは違う行動をしてはいるので、業績改善を信じて一生懸命やっているのですが、行動が集客につながるものばかりなので問い合わせは増えるものの数字の底上げにはなかなかつながらない、ということになってしまうかもしれません。
やはり、「商品サービスそのものの品質改善」だったり、「クロージングの工夫」といった「セールス(販売)プロセスに属する行動」と両面からしっかり計画していく必要があるでしょう。

●広告媒体の先の「情報」を練り上げよう
●販売手法の先の「話法や説明の構成」を練り上げよう
●商品サービスの「使い方やアフターケア」を練り上げよう

(TKC継続MASシステムで作成する経営計画書に盛り込むために)
経営者の方に行動計画を考えていただくと「ホームページをたちあげる」とか「訪問件数を増やす」とか「商品の品質向上」といった表現で終わっているケースが多い、です。
もちろん、それだけでもきちっと計画書に明示することによって、少なくともその方向性での行動につながるという意味でプラスだとは思います。
(人間は紙に書いてそれを公表することによって、心理的に行動せざるを得なくなるそうです。)
しかし、一方で逆にそれで安心してしまうという心理特性もあるのではないでしょうか?つまり、書いたこと以上の前進もないかもしれない、ということです。
もちろん、行動とそれによって目指すべき予算に月々の実績数値を比較していきますので(当事務所が提供する月次単位での予実対比サービス)、その都度検討し直すチャンスは
あるのですが・・・。
ですから、「ホームページをつくる」という広告媒体を決めるだけではなくその先の「掲載する情報」について徹底的に練り上げるなど、計画段階でより具体的に細かいところまで掘り下げていって欲しいとおもいます。(一緒に考えましょう)

●顧客の行動パターンモデルを考えながら計画してみるのも・・・・
<現在執筆中>

ステップ7 行動あるのみ

●P-D-C-Aを回す
あとは、今までのステップで策定した計画を行動するだけですが、そのためにはP-D-C-Aをしっかり回していくことが大切です。

P-D-C-Aとは「PLAN(計画)」「DO(実行)」「CHECK(検証)」「ACTION(対策)」の頭文字をとったものです。
このPDCAのサイクルを回していくことが、目標を単なるお題目で終わらせず、実現するためのポイントです。
当事務所「服部会計」では「TKC継続MASシステム」により、PDCAによる業績管理体制の構築を支援いたします。

このためには定期的に推進会議を開いてください。推進会議では実行すべき課題の一つ一つについて「実行したこと」「できなかったこと」「効果がはっきりないこと」に分け、できなかったこと・効果が完全にないことは、その理由を明らかにし、しかるべき対策を立案し直します。

成功の鍵は「成功するまで続けること」と言われますが、収益性の改善も同じです。計画数値をクリアできるまでP-D-C-Aを回して徹底してやり抜きましょう。

●社員に実行させるためには・・・
数字・計画を社員と共有して一丸となって実行しなければ意味がありません。
そのための工夫も考えましょう。

→全社計画を社長が考えて、それを各社員にブレイクダウンさせる(1人ひとりの目標に割り振る)
従って、社員も巻き込んで計画を策定するのもいいでしょう。(お仕着せの目標にならない)

→成績が給料に連動する仕組みで、数字への執念を植えつけさせる。

→社員のやる気を持続するためにコミュニケーションに気を使う

→方針を与えて実行させるのだが、方針が多いと社員は混乱してしまう。従って、2~3つの方針に絞って任せ、その進捗具合をしっかりチェックする。